勉強の為には睡眠を削ってはいけない!?記憶と睡眠の因果関係とは?
質の高い睡眠を確保できるかどうかは、情報の記憶に関係すると言われています。しかし、受験を控えている人が、ただ単に長時間睡眠を取るのは得策ではありません。睡眠と記憶には、実際どの程度影響があるのかを正しく把握しておき、適切な睡眠が取れるように心がけましょう。この記事では、勉強をする上での睡眠の重要性について解説していきます。
1.睡眠の脳への効果は3つ
睡眠が記憶に与える効果については、大きく3つの事柄が挙げられます。まず、1つ目は記憶の定着です。記憶の定着と睡眠は、深く関連していると言われています。睡眠中には脳の中の情報が整理され、記憶として定着します。このことから、受験を控えている場合でも、適度な睡眠を確保することがいかに重要かがわかります。
2つ目は、睡眠を取ることにより、脳の疲労が回復します。睡眠というと、「体の疲れを取るためのもの」というイメージがあります。たしかに、1日の体の疲れを取るのは重要なことです。しかし、日常生活を送るなかで、思考を巡らしたり感情の起伏等によって脳に疲労がたまります。脳にたまった疲労を回復させるのも、睡眠の重要な役割の1つです。
3つ目は、脳が発達していくうえで、睡眠は欠かせません。睡眠中には、成長ホルモンが分泌され、脳機能の発達にも関与します。睡眠で脳を休ませて、毎日規則正しい眠りが実現できれば、脳はよりしっかりと働いて発達していきます。
2.いい睡眠を取るためには?
これまで、睡眠は脳に対して良い影響を与えると説明してきました。ここからは、実際に良い睡眠を取るためにはどのようにすれば良いのかについて、具体的に紹介していきます。
2-1.良い睡眠を取るための方法
良い睡眠を取るためには、いくつかの方法があります。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のそれぞれを分解させたうえで、リラックスするための方法について把握しておきましょう。
まず、視覚についてです。部屋を明るくしたままでは、質の高い睡眠をとることはできません。特に眠る前にパソコンやスマートフォンを使用していると、画面から発せられるブルーライトで脳が覚醒してしまいます。その結果、寝つきが悪くなってしまうので、就寝前の使用は控えましょう。良い睡眠のためには、就寝する1時間前には室内の明るさのトーンを落とすことがポイントです。ベッドサイドには赤みがある暖色系のライトなどを設置するなどして、光の量や質を調整してみましょう。
次に、聴覚についてです。風の音や雨音、川のせせらぎなどは、聴覚に良い効果をもたらしてくれるものと言われています。そのほかに、ストレスホルモンを抑える効果のある音楽を聴いてみるのも良いでしょう。例えば、多くの人が心地良いと感じるクラシックやヒーリング音楽などを睡眠前に取り入れてみましょう。
嗅覚に働きかける方法としては、ラベンダーやカモミールなど、鎮静作用のある香りを使うと効果的です。自律神経やホルモンは睡眠と深い関係があり、間脳にある視床下部がコントロールしています。そのため、これらの香りを用いて、視床下部を刺激してみると良いでしょう。
さらに、味覚も良い睡眠に関係しています。快眠のためには、「トリプトファン」と「グリシン」の2つの成分を意識的に摂取してみましょう。必須アミノ酸の1つであるトリプトファンは、肉類・魚類・豆類・乳製品に含まれており、セロトニンを増加させることで不眠を解消してくれるだけでなく、アンチエイジングや集中力アップなども期待されています。加えて、グリシンは非必須アミノ酸で、魚介類に多く含まれています。グリシンは睡眠に対して働きかけるだけでなく、美肌を作ってくれる成分です。それだけでなく、体温を下げて入眠をサポートしてくれる成分なので、摂取するとより自然な睡眠を実現してくれます。
最後に、触覚です。勉強が忙しくなると、入浴の時間さえもったいないと感じる人は少なくありません。なかには、シャワーで済ませてしまうという人もいるでしょう。しかし、受験を控えているからこそ、しっかりと入浴することが大切です。具体的には、眠る1~2時間前までには、40度前後のお湯に10~30分程度浸かってリラックスしてみると良いでしょう。加えて、ベッドリネンやパジャマなどは肌に触れるものであるため、触り心地が良い素材のものを選びましょう。
2-2.良い睡眠をとるための事前準備
質の高い睡眠を取るためには、入眠準備を行うことも欠かせません。まず、寝る1時間前までにはリラックスすることを心がけましょう。スマートフォンなどの使用やたばこなどは控えることがポイントです。次に、パジャマは吸水性の高いものを選ぶようにしましょう。疲れているからといって普段着のままうたた寝をしてしまうと、なかなか疲れは取れません。寝る前にはパジャマに着替えるのはもちろん、夏場は汗をかきやすいので吸水性が高い素材でできたパジャマを選ぶことで良い睡眠が実現しやすくなります。
また、寝る時間の1~2時間前に入浴しましょう。40度前後のお湯に10~30分浸かっておけば、体温がじわじわと上がってきます。そして、眠る前には体温が下がるので、自然と眠ることができるようになります。ほかにも、眠りを誘うアロマやハーブティーを楽しんでみるという方法もあります。ラベンダーやカモミールなどは眠りを誘う香りであるため、「なかなか眠れない」などと感じている場合には、睡眠前の習慣として取り入れてみましょう。
3.睡眠不足が勉強に与える影響は
睡眠不足による悪影響としては、様々な事柄が挙げられます。例えば、睡眠が足りていないと記憶が定着しなくなるのはもちろんのこと、心身にも重大な影響があるので、把握しておきましょう。
3-1.集中力の低下で勉強の効率が落ちる
睡眠不足の状態が続くと、集中力が低下します。そうなってしまうと、効率が悪い勉強をしてしまう恐れがあります。効率が落ちた状態で勉強をしても、記憶にはなかなか定着しません。そのうえ、時間ばかりがかかってしまう恐れがあるため注意が必要です。
人間の記憶には、「短期記憶」と「長期記憶」の2つがあります。短期記憶とは、短い間だけ保てる記憶のことを言います。一方、長期記憶は比較的長い期間にわたって保持される記憶のことです。
短期記憶は脳の「海馬」と呼ばれるところに蓄えられます。睡眠中に大脳辺縁系にある扁桃体によって記憶が取捨選択されます。そのため、効率が悪い勉強の仕方をしていると、学んだことが短期記憶にとどまってしまう場合もあるのです。また、睡眠不足で記憶の整理が不十分な状態になると、短期記憶が長期記憶に変換されないという問題につながります。長期記憶として知識がとどまらなければ、どれだけ勉強をしても記憶として効率よく定着していかないことになります。
3-2.やる気が起きにくくなる
やる気を起こすために必要なのは、「脳の覚醒」と「記憶の整理」です。まず、脳を覚醒させることによって、集中力や反射能力がアップします。脳が覚醒している状態では、仕事などの作業効率が向上したり、スポーツのパフォーマンスが上がったりすることなどが期待できます。
次に、記憶の整理も欠かせません。レム睡眠時には、すでに記憶したことと新たな記憶を関連付けるだけでなく、次回想起するときにスムーズにできるように索引を付ける作業を行っています。
さらに、勉強でやる気を起こすためには、「ストレスがない」という点も重要です。ノンレム睡眠は深い眠りに落ちている状態で、脳と体がリラックスする眠りのことを指しています。脳は睡眠時にリラックスすることによって、脳内のメンテナンスを自ら行っています。脳がこの作業を行うことで、脳は疲労回復しているのです。
4.勉強時間と睡眠時間のバランスを保つには?
昔は「四当五落」といって、5時間も寝ると不合格になるなどと言われていました。しかし、今は長時間勉強することが必ずしも良いとは言われていません。ここからは、集中して勉強することの重要性について説明していきます。
4-1.体調や年齢に合った睡眠時間を取る
最適とされる睡眠時間は、人によって異なります。加えて、体調不良などの問題も考慮すると、必要な睡眠時間は状況によって大きく変わってきます。さらに、年齢によっても睡眠時間は変わってきます。例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは、1日のほとんどの時間を眠って過ごします。そして、10代になると約8時間、20代では約7時間程度という様に睡眠を取っている人も多いでしょう。このように、睡眠時間は、年齢を重ねると少なくなる傾向にあります。「睡眠時間を削って勉強しているのに、なかなか成果が出ない」と思っているのであれば、睡眠にあてている時間が自分にとって合っていない可能性があります。今一度自分の睡眠時間を見直して、質の高い睡眠を実現するための工夫をしたり、オンとオフの切り替えをしっかりと分けたりするなどの努力をしてみることが大切です。
4-2.仮眠をとって集中力アップ
心身が疲れていると、勉強をしてようと思ってもなかなか集中することはできません。このような場合では、夜の睡眠だけではなく、思い切って仮眠を取ってみると良いでしょう。仮眠を取ることによって、脳を覚醒させたり、ストレスを緩和させたりするなどの効果があります。仮眠をする場合は10~20分間集中して睡眠をとると、注意力が急速に回復して意識もはっきりとしてきます。
4-3.勉強の「量」よりも「質」を重視する
勉強の成果は、必ずしも勉強時間に比例するとは限りません。ダラダラと長時間勉強するのではなく、量より質を重視して成績アップを狙うことが大切です。より「質」を重視しようと思うなら、勉強をする目的をしっかりと把握しておきましょう。例えば、「定期テストに向けて勉強する」と、「受験で志望校に合格したい」という目的では、勉強内容が大きく異なります。勉強で悩んだときには、勉強する目的を見つめ直し、それに対して最適な方法を考えましょう。目的に合わせた効率的な勉強法を行えば、睡眠時間も確保しやすくなるでしょう。
良い睡眠をとって効率よく学習することが大事
自分なりの勉強法を確立して志望校に合格するためには、質の高い睡眠を取ることが大切です。自分にとって必要な睡眠時間を確保すると、記憶を定着させ、心身のストレスも軽減できるようになります。適切な睡眠を取ることで勉強に対する意欲や集中力を向上させていくと、勉強の効率もどんどん上がっていきます。日頃から良い睡眠を取るように心がけ、質を重視した学習を目指しましょう。