怒ると叱るの違いは?強く咎めるのではなく問題点を伝える意識を持とう!
子どもの頃に怒られることが嫌いだった人も、家庭を持って歳を重ねるつれ、自分の子どもを怒る立場になっていくことが多いでしょう。いくら注意しても効果がなくて、途方に暮れてしまうケースもあるのではないでしょうか。その場合は、「怒る」と「叱る」の違いを意識することが大切です。この2つの似た言葉には大きな違いがありますので、今回はその違いを解説します。
1.「怒る」と「叱る」の違いとは?
「怒る」と「叱る」は同じよう使われることが多い言葉ですが、明らかな違いがあることを理解しておきましょう。国語辞典には、どちらも「相手の行動の問題点を強くとがめる」という趣旨の内容が書かれています。つまり、「強く言う」というニュアンス自体は同じですが、それを行う理由やスタンスはまったく別物なので注意が必要です。「怒る」のは怒りの感情が爆発して抑えきれなくなったからであり、きつく言うことでその感情を外にぶつけようとしています。一方、「叱る」のは相手に気付きを与えたいと思うからです。今後の子どもの成長に結びつけるため、適切な考え方や手段などを紹介します。
以上のように、「怒る」ことの理由は自分本位なものである場合が多く、「叱る」ことの理由は相手本位な場合が多いです。子どもが言うことを聞かないと、つい感情的になってしまうこともあるでしょう。しかし、そこで選択する行為が怒ることであれば、子どものためではなく、自分のために行っている行為であるということになります。目下の人に怒っても、相手に変化を促すことにはなりません。問題が解決する見込みは少なく、むしろ逆効果になってしまう恐れもあります。したがって、怒ってしまいそうなになったら、相手本位のスタンスを心がけ、叱る方向に切り替えることが大切です。以降の段落では、家庭内における効果的な子どもの叱り方について解説します。
2.子どもを叱るときに意識すること
子どものことを思いやって叱ったつもりでも、期待通りの結果にならないことは珍しくありません。そのような事態を避けられるように、家庭内で子どもを叱る際に意識したほうが良い点を以下に説明します。
2-1.叱る基準を決めておくこと
大前提として、子どもに叱りすぎると逆効果になりやすいことを覚えておきましょう。なぜなら、相手のために行う行為とはいえ、強く言う行為であることに変わりはなく、こちらが想定していないようなショックを与えてしまうこともあるからです。特に、多感な年頃の子どもはデリケートなので、ひどく傷ついてしまう恐れがあります。そうなると、本当に伝えたいことを理解してもらえなくなるでしょう。したがって、叱りすぎないようにセーブする習慣を身につけておく必要があります。
ただし、普段からセーブしすぎていると、大事な場面でも叱りにくくなってしまいます。したがって、夫婦で相談をして、叱る基準を明確にしておくことがポイントになります。どのような場面で、どれくらい強く言うのか細かく決めておきましょう。そのようにして、本当に言い聞かせる必要があるときに絞って叱ることで、子どもを良い方向に導きやすくなります。また、叱る場面や度合いについて夫婦間で共通認識を持っていれば、一方が叱りすぎているときに、もう一方が注意を促すことなども可能となります。
2-2.理由を伝えること
理由をきちんと伝えることも叱る際のポイントになります。子どものために言った場合でも、言われた本人は単純に怒られたとしか思えないこともあるからです。なぜ強く言われているのか分からない場合に、そのような誤解をしてしまいます。例えば、「黙りなさい」と叱ったときに、その必要性が分からずに納得できない表情を浮かべることもあるでしょう。「どうして話してはいけないの?」と質問してくるケースもあります。そんな場合に、理由を教えないで「とにかく黙っていなさい」と告げると、どのような場面で話してはいけないのか理解できず、成長の糧にならないので注意が必要です。
それどころか、普段の口数も減ってコミュニケーションが苦手になるかもしれません。つまり、頭ごなしに叱ることには、成長に悪影響を及ぼすリスクがあるのです。ただ言われたことに従うだけで、応用がきかない子どもになってしまい、学校に馴染めなくなるなどの問題が生じる場合もあります。そのリスクを考慮して、叱るときは必ず理由もセットで伝えるようにしなければなりません。もし子どもが反論してきたら、それに対して怒るのではなく、聞く耳を持ってあげることも大切です。
2-3.叱りすぎたときは親も謝ること
しっかりと叱る基準を決めていても、それを守れないで叱りすぎてしまうこともあるでしょう。当然、親も人間なので常に冷静に判断するのは難しいですし、我が子のためだと思うとつい熱心になりやすいです。落ち着いてから、叱りすぎたことを後悔した経験がある人もいるのではないでしょうか。しかし、後悔して反省するだけでは足りない場合もあります。前述のように、叱るときには強く言うことになるので、度が過ぎると子どもの自尊心を傷つけてしまい、欠点ばかりに目を向けさせてしまう恐れもあるからです。自己肯定感を育む必要がある時期なので、そのような心境にさせるのは避けなければなりません。
したがって、叱りすぎた場合はアフターフォローが重要になります。今後は気をつけようと思うだけでなく、子どもの気持ちを考えて謝罪をしたほうが良い場合もあるのです。そうすることで、自尊心や自己肯定感の低下を防げる可能性がありますし、子どもは良くなかった点を素直に反省しやすくなります。また、子どものほうから謝ってきた場合に、しっかりと褒めてあげることも大切なアフターフォローの1つです。
2-4.過去を持ち出さないようにすること
叱っているときに、同じような理由で叱った経験を思い出すこともあるのではないでしょうか。思い出すだけでなく、その過去の出来事まで持ち出して、再び叱ってしまう親もいます。子どもにとっては叱られる量が多くなってストレスが増えるだけなので、過去のことまで挙げるのは良くありません。複数の件について同時に言われると、どうして叱られているのか分からなくなる場合もあります。子どもは大人ほど複数のことを関連付けて考えるのが得意ではないので気を付けましょう。
叱り始めたら、対象としている行動だけに焦点を絞って、子どもと一緒にその問題としっかり向き合わなければなりません。そのため、いくら昔の別件が頭をよぎっても、弾みで口に出さないようにすることが大事です。過去を持ち出すのは簡単ですが、子どものためにならず、自己満足にすぎないということを理解しておきましょう。
2-5.人格否定に繋がる発言をしないこと
子どもを叱るときに、良くない部分がいろいろと目につく場合があります。身近な存在であるからこそ、些細な欠点まで気になることも多いでしょう。それらが積み重なると、「本当に駄目な子ね」というように、子ども自身を否定するような言い方をしてしまう恐れがあります。親に人格を否定されることは子どもにとって大きなショックに他なりません。また、なかなか聞き入れてくれないと、「もう勝手にしなさい」というように見放したくなる場合もあるでしょう。信頼を置いている親にそのような態度をとられると、とても心細くなりますし、愛されていないと感じる可能性もあるので要注意です。
また、「友達はもっと上手でしょ」というように、他の子どもと比べるのも良くありません。劣等感を抱かせることになり、努力しようとする姿勢を妨げてしまうケースもあるからです。これらの叱り方では、どうすれば改善できるのか教示することができておらず、子どもの自尊心を損なわせるだけの結果になります。したがって、人格否定になりそうな発言などは控え、叱るべき行為に関してのみ叱るようにしましょう。
2-6.子どもの気持ちを一度肯定してから叱る
一般的に、子どもは自分の考えを親に認められると嬉しい気持ちになります。そのため、いきなり叱るのではなく、まずは子どもの考えに寄り添ってあげることも大事です。良くないことをしたときは、最初になぜそのような行動をとったのか聞いてあげましょう。大人から見るとただの問題行動でも、子どもにとっては正当な理由がある場合も少なくありません。また、理由を聞いたときに、矛盾などがあっても、すぐに否定するようなことを言わないように気を付けましょう。
叱る際には、いったん子どもの言い分を肯定してあげることがポイントです。「そう思ったんだね」というように、理解を示してあげることで、子どもは自分の考えを受け入れてもらえたと感じ、親の考えも素直に聞いてみようと思えるようになります。そうしてから叱るようにすると、伝えたいことをしっかりと分かってもらいやすくなります。
2-7.改善したら褒めてあげる
叱るのは子どもの成長のためであり、それが見事に成功することもあります。しかし、改善したのは子どもが自分の言ったことを聞き入れてくれたからであり、決して親だけの成果ではありません。したがって、満足するだけでなく、しっかりと子どもを褒めてあげることも忘れないようにしましょう。褒めてあげないと、改善した後も子どものなかには叱られたときの悲しい気持ちだけが強く残る場合もあります。そして、叱られっぱなしの記憶は、子どもの自己肯定感の成長を阻害するリスクがあるので、できるだけ払拭してあげることが大切です。
そのためにも、叱るときは、改善した後に褒めてあげることも見据えておきましょう。いつもより愛情を強く感じられるほど、大げさに褒めてあげても構いません。そのように徹底することで、子どもは自分の成長を実感しやすくなるため、自己肯定感が高まることを期待できます。
3.「叱る」のではなく「諭す」という発想
上記のような叱り方が良いと分かっても、繊細な子ども相手に必ずしもうまく実践できるとは限りません。なかなか成功しない場合は、叱ることから始めるのではなく、諭すことを最初のステップにするという手もあります。叱るときのように強く言うのではなく、感情的にならないように気を付けながら問題点の指摘を行うのです。子どもは自分の行いが良くなかったと自覚していることも多く、それだけで十分に反省を促せることも少なくありません。つまり、「叱る」という行為自体が適切でないケースもあるということです。
また、子どもは物事に次第に慣れていくため、何度も叱っていると効果が薄れていきます。それどころか、親のことをヒステリックで口うるさい存在としか思わなくなるかもしれません。そうなっては逆効果なので、「叱る」だけでなく、「諭す」も子育てに導入して使い分けるようにしましょう。
感情的になるのではなくしっかり問題点を伝えよう
親として子供を育ていくのは簡単ではありません。子供のために叱っても、方法を間違えて逆効果になったり、うっかり心を傷つけたりする可能性もあるのです。本記事で解説した「怒ると叱るの違い」「上手な叱り方」を理解することでそのリスクを下げられますが、人間なのでミスをすることもありえます。しかし、その場合も焦る必要はなく、適切に軌道修正すれば大丈夫なので、落ち着いて対処するようにしましょう。